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月の光に導かれる海洋環形動物の秘密
quantamagazine.org·2026-03-22·SCIENCE

月の光に導かれる海洋環形動物の秘密

月の満ち欠けに合わせて一斉に繁殖する海洋環形動物Platynereis dumerilii。この不思議な現象の鍵を握るタンパク質L-Cryの構造が解明されました。月光を感知する分子メカニズムについてお伝えします。

研究の詳細

一生に一度しか交尾の機会がないこの生物は、月明かりの下で水面に浮上し、卵や精子を放出します。これはただの偶然ではなく、月光を感知する分子メカニズムが生物時計を調整しています。

2023年12月19日、Nature Communications誌に発表された研究によると、ドイツの研究者チームがこのメカニズムの鍵となるタンパク質L-Cryの構造を解明しました。L-Cryは暗闇では二量体として存在し、強い日光を浴びると単量体に変わります。この構造変化が月光と日光を区別し、繁殖のタイミングを調整する役割を果たしています。

この研究は、月の周期に同期する生物時計の分子構造を明らかにした初の試みとされています。人間の月経周期が約28日であることから、月の周期と生理的リズムとの関連性も示唆されています。しかし、この仕組みがどのように進化したのかは、まだ解明されていません。

画像 出典:quantamagazine.org

先人の知恵と科学の接点

月の満ち欠けと生物のリズムの関係は、日本の漁業でも古くから知られてきました。潮の干満に合わせた漁は先人の知恵ですが、その背景にある分子メカニズムが科学的に解明されつつあるのは感慨深いものがあります。

編集部の視点

月光に導かれる生物たちの世界は、私たちの理解を超えています。進化生物学や生物時計研究に新たな視点を提供し続けるこの分野の研究は、自然界の精密さを改めて実感させてくれます。